少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口73-

73 ある方



ごまかす様子もなく返事をするキャンドーにリンダは苛立ちを隠せない。


「はっ!正直に言うじゃないか!どういうつもりだ?私が適当言ってるってわかってあの子たちへのその態度。どういうことだ?返答次第では、アンタをここからあの子らと一緒に通すわけにはいかないよ。」


キャンドーはリンダの質問の意図を理解し、慎重に答える。


「・・・あの、あのお2人はこの庭園の地上に降り立って城へ来たそうで、その時はドラゴンに乗って来て、とても広そうな場所だと言っていったのです。」


「・・・それで?」


「私とは城の中で出会い、いろいろあって一緒にこの城の外へ出ることに決めたのです。私自身は先程も言いましたように長いことここから外に出ておりません。そのことは彩里水くんと白兎くんにも既に伝えてありました。」


「・・・。」


リンダは先を促すように頷いて相槌だけ打つ。


「ですので、私が何か言っても彩里水くんと白兎くんが目で見たもの以上に私の言葉を信じられるかどうかわからなかったので、機会を窺っていました。」


「・・・。なるほど?つまり、私が言った500ミロン先に看板がいるってのは適当で、でもそれをあの2人が心から信じればそこに必ず現れるってことはわかってるわけだ。で、アンタ、あの子たちと一緒に外の世界に出てどうするつもり?長いことここにいたんでしょ?今更なんの不満があって出ていくんだ。外の世界は城よりよっぽどひどい可能性が高いってことぐらいは、わかってんだろ?」


「・・・はい。私は、吏胡以前より、ずっとある方にお仕えしていました。そして吏胡以降はこの国の塔に幽閉同然に置かれたままになっていました。初めはそこから抜けだすこともたくさん考え実行していましたがいつも失敗し、次第に心も風化していきました。そしてもう本当に長い年月、心を閉ざしておりました。ところが、あのお2人が昨日、突如塔に現れたのです。私は言い伝えは本当だと興奮しました!・・・あなたもあの2人が異世界から来た純人型の子供たちであるとわかったから手助けするのでしょう?」


それまで従順そうに説明をしていたキャンドーが、最後のリンダへの質問の部分だけ鋭い視線でリンダを射貫くように見据えたことにリンダは少し圧倒された。


「・・・はっ。なるほどね。枯れた心が、あの2人を見て希望を取り戻したってわけ。」


「・・・そういうことです。」


キャンドーは再び元の従順な雰囲気を取り戻す。


「・・・それで?この世界の外に出て、アンタは何をしようっての?」


「お2人はこの世界について何も知らないですから、私がこの国の知識として付いていき、少しでもお役に立てればと思っているのです。私は、私がお仕えしたあの方を、あのお2人なら救い出していただけると信じる事しかできません。」


「・・・まさか。アンタのお仕えした方って・・・。」


「ここでそのお名前は口には出せません。」


キャンドーは神妙な顔でリンダを遮る。


「・・・はっ。驚いた。驚いてばっかだね、あんたたちには。・・・いいだろう。アンタを信じるよ。あたしたちも、できることは協力する。あたしたちみんなも吏胡以降はひどい目に遭ってんだ。・・・見ればわかるだろうけどね。」


キャンドーは玩具の集団たちを見回した。

ほとんどの者がボロボロに壊れながらなんとか形状を保っているというような状態だった。


「ええ。吏胡以降、ひどい目に遭っていない者たちなどごく僅かでしょう。ここへ来るまでの間にも感じました。・・・少なくとも従業員棟さんは我々の味方でしょう。」


キャンドーは空を見つめて心がここにはないように呟いた。


「・・・従業員棟さん?」


リンダは訝しげに聞く。


「あ、すいません。こちらの話でした。・・・リンダさんキャシーさん、ありがとうございます。何かあればお力添えをお願いするときが来るかもしれません。しかしながら今はまだ、彩里水くんと白兎くんにはお伝えする時機ではないと思っています。ですが、彼らは必ず、あの方を、我々を救い出してくださります。」


「・・・アンタほどは信じらんないけどね。でもあたしたちだって、希望は持ちたい。」


リンダが言うとキャシーも頷く。


「事情はわかった。行きな。・・・敷地の外のことはあたしたちもわかんないよ。気をつけんだよ。」


「はい。ありがとうございます。」


キャンドーとリンダの話が終わるのを待って、彩里水たちはリンダたちに別れを告げ、地中を進んでいった。


つづく

妄想列島

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