少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口9-

9禅と逸



「え?ドアノブが?」

「そうそう!ドアノブが!」

「・・・おまえ、それはさすがに嘘だろー?さっきからドラゴンとか妖精の剥製とか、魔女の子供たちの写真とかさー。」

「いやいや、オレだって自分で見てても本物とは思えないけど、でもこんなに不思議なことを実体験しちゃってるんだからさぁ。」

彩里水は信じてくれない白兎に少し不満な顔で言う。

「まあ、オレも遊園地にいたはずが全然違う場所で急におまえに追いかけられてたんだから、ある程度は信じるけどさ。」

「でも、全部ホントなんだからしょうがないじゃん。」

不満げな彩里水をなだめるように白兎は話の続きを促す。

「まあまあ、そんでドアノブが喋ってどうしたの?」

彩里水は不満顔のまま口をつぐんでいる。

「・・・・。」

「ごめん、信じるって!続きが気になるだろー。教えてよ。」

彩里水は渋々口を開く。

「・・・次に嘘とか言ったらもう話さないからな。」

「わかったわかった。ごめんって。」

「んじゃ許す。えーっと、そんでドアノブが・・・。」

彩里水の不思議な冒険の話をしながら森の中を深く深く進んでいった2人の耳に、どこからか誰かが歌う声が聞こえてきた。進めど進めど生物の気配のない森でお互いだけが頼りだった彩里水と白兎は顔を見合わせ声のする方へ向かって走り出す。

少し先の小さな広場のような場所で風変わりな格好をした双子を見つける。歌声の主は彼らだった。彩里水たちよりは年上だがかなり若い、高校生ぐらいと思われるその双子たちは彩里水たちに気付いて歌いながら近づいてきた。

「やあ、珍しいね。人が来たよ、逸。」

「本当だね、変わった格好だねえ、禅。」

「逸」「禅」と呼び合う2人は物珍しそうに彩里水と白兎を交互に見る。

一方の彩里水は目の前の2人に聞こえないようにボソッと白兎に言った。

「・・・ねえねえ白兎、この人たちの格好、目がチカチカするね。」

「ぷっ!ははは!確かに。」

この生き物の気配が感じられなかった森に、唐突に変わった2人が現れて、白兎は警戒心で凝り固まってしまっていたが、彩里水の屈託のない感想に思わず声を出して笑う。彩里水は双子の格好をマジマジと見る。

――変わった格好・・・って確かに白兎は全身白い格好だけど、Tシャツに短パンだし、オレは・・・。あれ?オレ青いTシャツに白い短パンだ。・・・こんな格好だったっけ?でも、この人たちの方がよっぽど変な格好だよなー。

双子は頭より遙かに小さい黄色と赤のストライプの帽子を、被るというよりは頭に乗せている。これまた黄色と赤のストライプ、のオーバーオールをお揃いで着ている。靴は善の方が赤、逸の方が黄色だ。オーバーオールの下には白いブラウスを着ており、つけている小さな蝶ネクタイの色は善が黄色で逸が赤だ。

「なんか、変な人っぽいね。ミュージカルみたいに歌いながら話してるし。2人ともイケメンなのにね。」

彩里水が真顔で呑気に言うので白兎はもう1度笑った。

妄想列島

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