少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口14-
14 伝説の背中
2人は目を輝かせて顔を見合わせると、次の瞬間、まだ遠くにいたと思っていたその巨大な鳥と思っていたものは彼らの目の前に現れた。
彩里水も白兎も目の前の巨大な生物に畏怖と恐怖を感じていた。
白兎にとっては、アニメや漫画、本やゲームなどでしか見たことがない、そして彩里水にとってはされに加えてあの落ちてきた穴で見た剥製と写真に映っていた生物。
全長3,4mはありそうな岩石のような体躯は鉄のように黒光りしながらも鱗がある。黒いコウモリのような翼は広げれば片翼で3mはありそうだ。
全身が黒く目も小さく真っ黒。しかしながら目の奥はまるでその獰猛さを隠すことがないようにギラリと鈍く光っている。感情は一切窺えない。
前頭部にある2本の太い角は、餌食を串刺しにするために備わっていることが当然とでもいうように、先端が冷たく鋭く尖っている。
逞しく強靱な四つ足にもびっしりと鋼のように固そうな鱗が生えており、太い尻尾は剣山のように鋭くとがった針が鱗の代わりにビッシリと埋め尽くされている。
猛々しく恐ろしい、そして一目見て心が通い合うことなどないと思わせるその巨大な生物は、彼らの目の前であの双子に向かって、その首を服従するかのように傅かせる。
「こ、これ・・・これ、ドラゴンだよね、白兎。え・・・夢かな?」
彩里水は唾をゴクリと飲み込むとやっとの思いで言葉をひねり出す。
「いや、、ドラゴンだよ。ってか夢って疑うならちょっと遅くない!?」
白兎は恐怖と感嘆で未だ返事以外の言葉を発することができない。
突然やってきてしまったこの不思議な世界で、つい先程まで見知らぬ存在だった年端もいかぬ互いしか頼りの無い不安、恐怖。
そして謎の2人組に縄で縛られ、目の前には巨大な見たこともない、いや、絵本や小説や漫画やアニメで幾度となく見てその存在に憧れ、恐怖を抱いてきた生物がいる。2人の少年の恐怖は言葉を発することができないほどではあった。
しかし、それ以上に、この伝説でしかないはずの生物が目の前にいることへの、そして自分たちが今まさに経験している冒険とが、歓喜と驚嘆とそしてこの年代でしか感じる事ができない無謀な好奇心が、彼らの興奮を沸き立たせた。
「すっげー!本物の竜だ!すげー!」
「マジかよー!やばい!」
彩里水と白兎がただ感嘆の声をあげる間、双子とドラゴンはまるで会話でもしているように目と目を見つめ合っている。
その後、宙を浮いていた双子は再び縛ったままの彩里水と白兎を連れ、巨大な竜の背に胡座をかく。
彩里水と白兎も縛られたままで竜の背に寝転がるようにドサッと倒される。
「ふっふっふ。君たち、覚悟はいい?」
「逃げられないよ?」
「や、やだ・・・怖い・・・。じゃなくて、や、やばい。オレ泣きそう。ホントにいたな、彩里水。」
白兎が震える声で言うと、彩里水は両目に涙を浮かべ言う。
「何言ってんだよ、白兎。てかオレ、オレもう泣いてる。オレたち・・・ドラゴンに乗ってるね、白兎。」
「やばい。死んでもいいかも。彩里水、さっきおまえの話、疑ってごめんな。オレこれからはおまえのこと絶対信じるよ。」
「うん!てか白兎、今死ぬとか言うとあんまりシャレになってないからやめなって。」
伝説の生き物に自分たちが乗っていると言うことに感激が止まらない2人は、互いに感嘆の気持ちを述べ合っている。すると双子が呆れた顔で言う。
「・・・君たち、大概呑気だね。」
「この状況で観光でもしてるかのような雰囲気だね。」
そう言って双子がピュイピュイッと再び口笛を吹くと、竜は再び轟音を上げものすごい速さで空を駆け始めた。
つづく
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