少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口40-

40 じゃあちょっと試してみよ



3体からの予想以上に前向きな答えを聞くことができて、白兎は安堵すると共に心強さを感じる。


「ありがとう!本当に助かる!」


その言葉を聞いたキャンドーは彩里水のお陰で収まってきていた気持ちがまた再び溢れ返り涙をこぼしている。


「じゃあ、早速なんだけど。試しにそうっと鉄格子に近づいて、外に出てみて欲しいんだ。これは1人でいいと思う。・・・ちなみにオレはこの役、キャンドーに頼みたいと思ってるんだ。キャンドーならその燭台に縄を引っかけて戻ってくるのに適してるかなと思ってる。」


指名されたキャンドーは嬉しさで卒倒しそうになるのを抑えて返事をする。


「は、はい!お任せください!」


敬礼しながら返事をするキャンドーの声はうわずっている。


「でも、もし危なそうだったらすぐに戻ってきて。」


「はい!」


キャンドーが鉄格子の付近へ向かっても、トランプの3たちは特に何の反応も示さない。キャンドーが部屋の中に入ってきていることにも、未だ気付いていないのだろう。


キャンドーは鉄格子の隙間からソッと三つ叉に分かれた燭台の1つを外に出してみる。

相変わらず何の反応も示さないトランプの3。



そうっと2本目の燭台も出す。


何の反応もない。


キャンドーは思い切って体の上半分を外に出してみる。


トランプの3は拍子抜けするほど全く何の反応も示さない。


この反応を見たキャンドーは、白兎の推測通りトランプの3たちは彩里水と白兎の動向だけしか気にできないのではないかと結論づけ、思い切って全身を外に出した。


案の定、トランプの3たちは気にも止めていない。


心配そうに様子を窺っていた他のチーム白水たちに向かって、キャンドーはニカッと笑顔を向けながら右の燭台を小さく振る。


チーム白水たちは、無事役目を終えた仲間に、早く戻るようにと声を立てずジェスチャーで手招きをする。


しかし、キャンドーはこれだけマークされずに外に出ることできた今、気が大きくなっていたこともあり、この状況を利用しない手はないとそのまま縄に向かっていく。


戻って来ないキャンドーを見て仲間たちは慌て、戻って来いというジェスチャーをより強める。


しかし、キャンドーはもう縄の方しか見ていなかった。


キャンドーは、トランプの3の様子を見ながらもサッと縄の方まで移動し縄に紛れるように身を隠す。


縄の先を自身の体に絡めるように巻き付け、今度は部屋に向かう。縄はキャンドー自身の小さな体には重く感じられたが、それでも先端から引きずるようにすれば持てなくはない。

行きよりも動きは少し遅かったが、無事縄の先端を絡めたまま戻って来ることに成功した。

彩里水たちは鉄格子のすぐ脇のトランプの3たちの死角になるような位置でキャンドーを待ち構えた。

「キャンドー!無茶するなよ!」


開口一番、白兎はキャンドーに向かってトランプの3たちに聞こえない程度の声で叱る。

誇らしく戻ってきたキャンドーは予想外の叱責に小さくなる。


「あ、す、すいません・・・。わ、私・・・。」


「あ、いや、ごめん、強く言いすぎた。でも、危ないだろ!もし捕まったりしたら、またあそこでずっとただ人が来るのを待つだけになっちゃうかもしれないし、もしかしたらもっと悪いことになるかもって思って・・・。」


白兎が言うと、キャンドーはまた目に涙を浮かべている。


「うぅっ・・・。出会ったばかりの私のことを心配してくださるなんて、白兎さんはなんてお優しいんですか。それなのに私ときたらっ。それにすぐに泣いてしまって・・・。誰からも相手にされなかった時間が長すぎて、とても涙腺が緩んでいるようです。うっうっ。」


「キャンドーさん、無茶はダメだけど、オレたちほんと助かったよ。ありがとう!」


笑顔でお礼を言う彩里水にまたキャンドーは目から涙を溢れさせる。


「あ、そうだよな。まずお礼が先だった。・・・ありがとう。キャンドーさん。」


白兎はキャンドーの高さまでしゃがんでお礼を言った。


つづく

妄想列島

オリジナル小説。 『少年彩里水(アリス)の不思議冒険譚』毎日配信中。

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