少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口46-
46 いきたい
キップとクップがチェイスに話しをすると、チェイスは初めは泣きながら2人に考え直すよう諭していたが、ベドとドッベの説得もあり最後には2人が出て行くことに納得し協力することになった。
「でも、キップとクップ。あなたたち、ラープンさんとサンクさんには何も伝えないで行くつもり?」
チェイスは怒ったような悲しいような顔で言う。
「・・・。」
キップとクップは俯いたまま黙っている。
「いくら何でも今まで散々お世話になったのに何も伝えないで行くなんて・・・。」
チェイスが言いかけると、黙っていたキップが口を開いた。
「でも!僕たち!」
「行きたいんですー。」
「僕たちはラープンさんとサンクさんにたくさんお世話になってきました。物心ついたときからこの許しの塔で育ってきた僕たちにとって、ラープンさんとサンクさんは親代わりであり先生であり素晴らしい友人です。できればきちんとお別れをしたいです。」
「でもぉ、万が一お伝えして反対されてしまったらぁ、万が一彩里水さんと白兎さんのことを報告されてしまったらー・・・。」
「僕たち、リスクを増やすわけにはいきません。」
「僕たちのことを思えばこそぉ、ラープンさんとサンクさんはそういう行動に出る可能性がありますー。」
「・・・。」
チェイスは2人の話を悲しそうに聞いている。今はもう怒っている様子はない。
「もし僕らが泣いて頼めばそのまま送り出してくれるかもしれません。でも、それはラープンさんが最も誇りに思っているご自身の職業に対して、このお城に対して忠実な者というラープンさんの誇りに対して僕らはウソをついて欲しいと言っているようなものです。」
「はいー。サンクさんにしても同じですー。どちらが正しいのかということはぁ、僕らにはわかりませんー。・・・でも、僕らはぁ、この先に2度と皆さんと会えなかったとしてもぉ・・・。」
「例え、お世話になった方々にご挨拶もせず出て行くことになったとしても。」
「自分たちの行きたい道を行きたいんですぅ!」
「自分たちの生きたい生き方を生きたいんです!」
キップもクップも目に涙を浮かべていた。
2人の真剣な思いを聞いたチェイスさんはもう何も言えず、自身も目から溢れてくる涙を堪え切れていなかった。
「・・・わかってるよ、キップとクップ。オレたちがちゃんとおまえたちの気持ちは伝えておく。だから、たくさんの世界を見てこいよ。」
「ああ、仲良くな。」
ベドとドッベの力強い励ましにキップは涙が零れそうになるのをグッと堪えて言った。
「・・・はい!いつか、もしいつか帰ってこれ・・・。」
言いかけたキップは口をつぐんだ。
代わりにクップが口を開く。
「行ってきますー。お2人によろしくお願いしますー。」
「うん!オレらも気合い入り直した!」
彩里水は2人が自分の想像を遙かに超える強い意志でここから立ち去ることを決めたということを今、痛感した。それは白兎も同じだった。
「うん!出よう!みんなで!」
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