少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口52-
52 不思議の国の常識
「あれ?こっちから来たんだよね?」
「ほんとだ。」
白兎が答えるとポケットから顔をのぞかせたキャンドーが言う。
「この不思議の国へ初めて訪れた方は、皆一様に驚かれます。この不思議の国は見えていることや他の国の常識が一切通用しない国のようです。だから不思議の国と呼ばれるようになったようなんですが。目に見えることが全てではない。しかし、目に見えていることが真実でもある。そういうことなんです。」
彩里水の顔がすっかりハテナになっているのを見たキャンドーは付け足す。
「まあ、不思議の国の常識は全て非常識かもしれないということです。」
「キャンドーさんは、他の国をごらんになったことがあるんですか?」
2人の会話を聞いていたキップが口を挟む。
「ええ、私は燭台ですからね。夜道を行かねばならないときもありますし、昔は旅のお供としてご主人様にどこまでも連れて行っていただきました。」
「そうなんですかー?」
キップとクップは憧れの表情でキャンドーを見る。
「でも、でしたらお城の外の様子もわかるのでは?」
「それに関しては“はい”でもあり“いいえ”でもあります。・・・なぜなら、私は長いことあの場でただただ時を過ごしました。私が外の世界を自由に行き来していたのはあなたたちが生まれるよりきっと遙かに昔です。ですから、そんなに昔の様子で良ければ私もわかりますが、今はきっと昔とは違うでしょう・・・。」
そう言うキャンドーの表情は昔を懐かしんでいるようでもあり、また悲しみにくれていようでもあった。
「ああっと!私の昔話が聞きたければ、今度ゆっくりお話できるときにいつでも聞かせますよ。今は、先を急ぎましょう。いつまた気まぐれに庭園への出口を変えられてしまうかわかりません。従業員棟さんは起きてしまいましたかね?私が知っている頃の従業員棟さんも気まぐれでいたずら好きな方でしたから、いつも出口に出るのにも入り口を探すのにも大変でした。」
「キャンドーさんは従業員棟さんとお知り合いですか?」
キップが尋ねると、キャンドーは少し寂しげに言う。
「この従業員棟さんが私のいた頃と同じ方でしたらね。でも、どうでしょうか・・・。」
「えー?そんなに気まぐれなのかよ?入ったら最後出られないとかじゃないだろうな?」
白兎が不満げに言うとクップが答える。
「従業員の出入りが盛んな時間帯やぁ、命令があるときには動かないんですがぁ、普段はいたずら好きないい方なんですー。」
「でも、出られないほどコロコロ変えたりはしないと思うんです。」
「でもぉ、僕らもこの時間帯にここへ来ることはありませんから、もしかして人のいない時間だとアッチコッチ気まぐれにして楽しんでいるかもー。」
チーム白水は従業員棟についての噂話をしながらも矢印の示す方へ向かって歩いていく。
つづく
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