少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口51-

51 庭園はどっち?



エントランスホールには上下左右斜めあらゆる方向に向いた矢印と共に「あっち」「A棟ランドリー」「こっち」「B棟下足」「そっち」「庭園」「どっち」などの案内が表示されていた。


その中で白兎は「庭園」と「A棟ランドリー」の矢印が同じ方向に向いていることに気付いた。


「よし!庭園に向かいつつ、もしA棟ランドリーがあったらそこに寄ってみよう!扮装するまではなるべく早足で。」


「おっけー。」


従業員棟の廊下を早足で歩きながら彩里水はまた壁に掛けてある絵や写真を流れるように見ていた。


絵の中の人物は寝ていたり、ハイエナのような上半身とマグロのような下半身の魚が海を泳いでいる絵が動いているのを見た。

すると「A棟ランドリーはここ」と書かれた看板が横になって寝ていた。


「白兎、A棟ランドリーはここだって!入ってみよう。」


「うん。」


「皆さん寝ていると思いますのでお静かに。」


キップが小声で言うと、みんなは小声で返事を返した。


ランドリーには一見すると彩里水が目にしたことがあるような街角のコインランドリーのようだった。


「白兎、ぱっと見全部普通の物に見えるけど、これもやっぱりキップたちみたいに動いたり話したりするってことだよね?」


彩里水は白兎にだけ聞こえるように耳打ちする。


「うん。だと思う。」


白兎もコッソリ返事をするとキップとクップが小声ながら叫ぶように彩里水と白兎を呼ぶ。


「あ、ありましたありました!忘れ者。」


「さぁ、皆さんが寝ているうちに早くー。」


彩里水と白兎が忘れ者と書かれた看板が寝ている前に行くと、そこには大小様々な形の服や小物などがなんでも放り込まれている籠があった。籠は寝息を立てている。


「起こさないようにソッと取ってください。」


キップが言うと、キャンドーが悲しげに呟いた。


「忘れ者は大抵そのまま持ち主不在で一定期間が過ぎると処分されてしまうんです。」


キャンドーの呟いた言葉は、珍しい服や小物に夢中になっている彩里水と白兎、説明に一生懸命になっているキップとクップには聞こえていなかった。


「よし!これであんまり怪しくなくなったわけね?」


彩里水は猫耳の形の耳が隠れるニット帽に、狐の尻尾が入るぐらいのズボンを履いていた。耳の部分はピクピクと動き、尻尾は揺れている。


「おまえ、猫なのに尻尾太くない?」


「ズボンは狐みたい。」


「そういうの有りなの?」


「同じ種族じゃないとダメとかあんのかな?いろんな種族のミックスがいるって言ってたし・・・。変?」


彩里水はキップとクップ、キャンドーに助言を求める。


「大丈夫です!さっきよりは全然目立ちませんよ!」


「ほらあ。おまえのが変だろ、絶対。」


白兎はコアラの耳型の耳当てを付けて口と鼻はコアラの鼻型のマスクを付けている。そして下半身はホルスタイン柄の牛の尻尾付きのスカートだ。こちらも鼻がヒクヒクと動き、尻尾は白兎を叩き付けるような動きをしている。


「・・・なんでオレがスカートなんだよ!」


「しょうがないでしょ?サイズがオレたちに合って動物型なのこれだけだし。あんま変わったミックスとかは目立っちゃうんだし・・・。ジャンケンに負けたんだから黙って着て。」


「・・・くっ。」


白兎は悔しげに彩里水を見る。


「まあまあ、今はそんなことより先を急ぎましょう。」


キップはそう言うとランドリーの出入り口から廊下の様子を窺った。


「僕らが従業員棟に入る頃には空はすっかり明けてましたし、そろそろ日中に活動する従業員たちは動き始める時間です。」


「急ぎましょうー。」


そう言って再び彩里水のポケットに入り込むキップとクップ。その様子をみてキャンドーも白兎のポケットに入る。


「んじゃ、行こうか。」


再び廊下に出ると、彩里水は困惑した。「庭園」の案内表示の矢印が先程とは真逆に変わっている。


つづく

妄想列島

オリジナル小説。 『少年彩里水(アリス)の不思議冒険譚』毎日配信中。

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