少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口64-
64 ワンダフルランド
ワーワーと話し続けていた白兎はキャンドーの言葉に我に返る。
「・・・え?なんて?」
「不思議の国は、ワンダーランド、と言うんですが、そもそもはワンダフルランドだったとも言われています。」
キャンドーが続ける。
「ワンダフルってすごいとかって意味だっけ?」
彩里水はキャンドーに尋ねる。
「そうです。ワンダフルというのは素晴らしいとか不思議なとか素晴らしいとかいう意味があるんですよ。ちなみにワンダーは驚きとか、奇跡とかいう意味です。」
「ほおーう。」
彩里水と白兎の2人は声を揃えて返事をする。
「元々ワンダフルランドは思ったことが何でも叶う、素敵な、素晴らしい国、それが不思議なことも何でも叶うどんなことも思いのまま、という奇跡の国という形になっていったという説があります。詳しくは国の成り立ちというこの国の教科書を参考にしてください。」
キャンドーはおもむろに教科書をどこからともなく取り出す。
「それ、どっから出したの!?」
白兎が目が飛び出しそうなほど驚いて言う。
「どこでもありません。思ったことが叶う、と言ったでしょ?つまり私が、ここに教科書があると思えばそうなるんです。他の国でももちろん信じたことが叶うこともあるし、叶わないこともある。不思議の国の昔からの言い伝えによると、不思議の国以外の他の国でも全て信じたことだけが叶うはずなんです。ですが、人々の信じる力はだんだんと弱まっていき、今では信じたことが全て叶うことなんてあるはずがないというのが他国での常識になっているようです。ですから、信じたことが全て起こる不思議の国は信じられないことが起きる国なんです・・・。ああ、この話は今は関係ありませんでしたね。」
ゴホンと咳払いをすると、キャンドーは続ける。
「つまり、彩里水さんはここから抜け出すには地中に入って行けばいいんだと心から信じたと言うことになります。そうすれば、それが瞬時にどんなことでも反映される場所。それがこのワンダーランドなんです。」
そこで白兎は疑問を口にする。
「でも、それならオレらずっとここから脱出したいって思ってたのになんでこんな大変なの?」
「白兎くん、君はここから抜け出すのが大変だと信じてはいませんでしたか?」
「え?・・・あ、ああ、思ってた。」
「つまり、抜け出すのが大変なことになっているわけです。」
「うおおおおお!」
白兎はわかったようなわからないような、でもなぜだかとても気持ちが高揚し興奮し叫んだ。
「でもさ、それならキャンドーさんやキップとクップだって城にいないでいつでも好きなときに好きな場所へ行けるんじゃないの?」
今度は彩里水が尋ねる。
「・・・私たちは根底に強力に信じてしまっていることがあるんです。ここからは抜け出せない、抜け出してはいけない、というある種暗示のようなものがかけられている。かけられているとわかっていても抜け出すことが容易ではないほど強力なんです。と言うより、あなたたちが来るまで、ここから抜け出したという気持ちを持っていたことすら忘れていた程です。」
「ほう?」
理解できたようでイマイチ理解できていない2人は、理解しかねるような声で答える。
「まあ、この国やこの世界については機会があれば追々説明します。今は、この国で一番重要なことは“信じる強さ”だということを覚えていてください。心から信じていること。上辺だけでそうなったらいいなと思っていることとは少し違います。わかりますか?」
「うーん?」
2人は首をかしげながら曖昧に返事をする。
「まあ、それは頭で理解すると言うよりも感覚的に掴んでいくものかもしれません。とにかくこの国は、思ったことが何でも叶う素敵な国だということ、そして他の国にもそのような伝承があるということを実証させられる国なんです。」
つづく
0コメント