少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口75-

75 地上へ



笑い合っている2人にキャンドーが進言する。


「彩里水くん白兎くん。ここから地上に出る方法なら、私、先程リンダさんに窺っておきました。」


「え?マジ?さすがキャンドー。」


彩里水は笑顔でキャンドーに答える。


「はい。地上に出るには上に手をかざして、そこから自分がグイと何かに引き上げられるような想像をします。するとその真上の地上に立っているそうです。」


「へー。そんな簡単なことだったんだ。」


白兎は思ったより楽に出られることに拍子抜けしている。


白兎の思っている通り、なんとも簡単な方法でここから抜けることができると信じさせる方法をキャンドーは進言したのだった。

先程リンダたちから窺ったという点で、全くのウソを述べているわけではなかったが、掌をかざすなどの動作はキャンドーの口から出任せだった。

要は彩里水と白兎に簡単に出ることができる、そういうものなのだと心から信じ込ませることが重要だった。


「んじゃ早速やろう!」


そう言うと彩里水は掌を地上に向けギュッと目を閉じる。

その次の瞬間、白兎の目の前にいたはずの彩里水は姿を消す。


「わ!すげえ!でもやっぱこの急なの慣れないなー、オレ。・・・じゃ、オレたちも行こうか、キャンドー。」


白兎はポケットのキャンドーに声をかけると、彩里水と同様に掌を地上へ向けてかざす。

白兎はそのまま何者かに引き上げられてるような想像をした瞬間、ヒュッと実際に体が引き上げられたような感覚を覚え、気付くと彩里水が目の前に立っていた。


キャンドーは人知れず胸をなで下ろす。


彩里水は比較的頭が柔らかい質で、何でも受け入れる姿勢でいる性格の持ち主だということを、キャンドーはここまで一緒に行動してきて感じていた。


しかし、白兎は今までキャンドーが出会ってきた異国の住人たちの考え方に等しく、何かにつけて「そうはならない、できないんだ」と信じている。

奇跡は滅多に起こらないから奇跡なのだという認識であるようだった。


決して人より疑り深いわけでもないし、大人たちに比べれば発想はあくまで柔軟であるが、少しでも疑えば叶わないようなことを白兎に信じてもらえるのか、キャンドーは不安もあった。

もし1度でも白兎がこの方法に疑問を持ってしまえば、2度目からはどうしたって疑念が先立ってしまう。

下手をすればこのままここから出ることができなくなってさえしまうかもしれないとさえ思った。

その点で、彩里水の“提案を受けできそうだったら即行動する”という性格は、白兎に疑念の余地をもたらすことなく結果を目の当たりにさせることができ、キャンドーの思惑は思ったよりも断然スムーズにはまった。


「うわ!」


彩里水は目の前に突然現れた白兎に驚いて声を上げた。


「おわ!」


白兎も目の前に突然現れた彩里水に声を上げ、のけぞる。


「とうとう出たね。城の外。」


彩里水は短く白兎に言う。


「おお!・・・ああ、ホントに。」


白兎も周りをキョロキョロと見回しながら答えた。



つづく

妄想列島

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