少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口76-
76 気配
「さあ!ここまで来たよ、キップ、クップ。」
彩里水はポケットから2体をソッと出しながら声をかける。
キップとクップは彩里水に外に出されながら呆然と辺りを眺めている。
「・・・はい。僕ら、僕らとうとうお城の外に出たんですね。」
「す、すごいですー。夢じゃないでしょうかー。」
呆然と辺りを見回すキップクップに白兎はキャンドーをポケットから出しながらからかうように言う。
「なんだー?また泣いてんのか、キップとクップ。夢みたいなのはオレらの方だろー。変な世界に迷い込んじゃって。」
「泣いてないです!ただ、叶う日が来るとは思えなかった僕らの願いが本当に叶っていることをしみじみ感じていただけです。」
キップはプイッと白兎から顔を逸らし自分の顔を見られないようにする。
「僕ー。僕は嬉しくて涙が出てきちゃいますー。」
一方のクップは涙が次から溢れてくるのを堪えきれず素直に自分の気持ちを吐露する。
「よかったね。2人とも。でも、オレたちまだここで止まるわけにはいかないからね。」
彩里水は喜んだのもつかの間、気合いを入れ直す。
「だな。オレたちはここからオールワン遊園地を目指さんと。」
「2人は、ここからは別行動?どこか行きたいところの目星でもあるの?」
彩里水はキップとクップを地面に優しく置きながら問う。
「はい!実は僕らずっと1度は訪れたい場所があったんです。」
「はいー!ラープンさんのお話にあったミラーランドへ行ってみたいんですー!」
キップとクップは元気いっぱいに皆に告げる。
「ミラーランド?」
白兎が繰り返す。
「はい!ここはワンダーランドという国ですがこの国より海を渡った先にミラーランドという国があるとラープンさんに窺ったことがあります。僕ら幼いときにその国の話を聞いて、いつかその国に行こうってずっと話をしていたんです!」
「そうなんですー。そのことを、昨日彩里水さんにこのあとのことをどうする予定か聞かれた後に思い出しぃ、2人でそこを目指そうと話し合いましたー!」
「そっか!」
彩里水はキップとクップに笑顔で答えた。
「・・・んで、とりあえずオレたちどこ目指せば良いんだろうな?とりあえず目指す場所が決まるまではまだみんなで行動だよなー。」
白兎はキョロキョロと辺りを見回している。
「あの・・・。」
ガサッ
キャンドーが言いかけたその時、物陰から何かが動く音がした。
全員が瞬時に身を固くし周囲の様子を注意深く観察する。
「そう言えば、城に来る前は生き物の気配がまったくしない森をただ歩いてたけど、本当はあの森の草木や花も生きてたんだよな・・・。」
白兎はゴクリと唾を飲み込む。
「でも、あの時は本気で草も木も花もまったく物音一つ立てなかったし、小動物どころか虫一匹の気配も感じなかったよね。でも、・・・今確実に何か音がしたね。」
彩里水も注意深く周囲を警戒する。
一行はしばらく周囲の気配を警戒したが、その後はまたシーンと静まりかえっていた。
生き物の気配をまったく感じさせない森の中にただいるのだということを逆に強く感じる事になっただけであった。
「・・・ひとまずここを離れようか。どちらにしてもまだ気を抜くには早すぎたかもね。城の敷地のすぐ外に出ただけなんだから。」
彩里水は声を落として周囲を警戒し続ける。
「ああ。ひとまず、真っ直ぐ森を歩いてみよう。看板や生き物が見つかるまでどちらにしてもここにいても仕方ないしな。」
つづく
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