少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口6-
6 扉の向こうへ
クヨクヨしていても仕方がないと思った彩里水は、周りにあるものを利用できないかよく観察してみる。
床の中央から太い鎖が生えてきており、その上にゴージャスな電球がたくさんぶら下がっている。大きくて豪華な電気スタンドのように見えるが、逆さまから見ればシャンデリアなのかもしれない、と彩里水は思った。
――全長2mぐらいのシャンデリアから手を伸ばせば、もしかしたらテーブルに手が届くかもしれない。
けど、このシャンデリアっぽいやつ、先がとんがってるからなあ。
そこに立って手を伸ばすのは危ないかなあ。
シャンデリア自体は対した高さじゃないから落ちても少し痛いだけだと思うけど・・・。
万が一不安定な足場から足をすべらせたらガラスが割れて大ケガになっちゃうかもしれないよなあ。
1人じゃ助けも呼べないし、第一、ここに人の出入りがあるのかもわからないしな。
それに、手を伸ばしても届かなそうな気もするし・・・。
うーん。
そうは思っても今はそれ以外に方法が思い浮かばない彩里水。
このまましばらくここで誰かが出入りするのを待つ方がいいだろうか?
でもそうしたらもう白ウサギには二度と会えないかもしれない。
白ウサギを追ってきてしまった以上、今の時点では白ウサギに聞く以外元の場所に戻る方法もわからない。
何とか会話になるのはドアノブだけだが、今はだんまりを決め込んでいるし、今1番いい方法はやはりこの逆さまに生えているシャンデリアの先端からジャンプして鍵を取る方法だ。
なるべく早くしなければ、この間にも白ウサギはドンドン遠くへ行っているだろう。
そのような結論に至った彩里水は心を決める。
――うん、やるしかない!
決意した彩里水はシャンデリアに足を1歩1歩かけ上っていく。
ガラスのゾーンに入るときにはより慎重に手をしっかり握り、確実に足を踏みしめる。
今、とにかく自分以外に頼りはないのだ。
何とか無事にシャンデリアの上に到着する。シャンデリアの端の方から手を伸ばせば、届きそうだ少しだけ平らになっている部分に両足を乗せ何とかギリギリで立ちつま先立ちで手を伸ばすが届かない。
――あと少しなのに!届かない。あのジェットコースター乗れるくらいの身長があれば絶対届くのに。
せっかく意を決して登ったのにあとほんの僅か手が届かず、彩里水は悔しくて涙が出てきそうだった。でもこんなところで泣いてる場合ではない。
――思い切ってジャンプすれば鍵には絶対届くんだ。
とはいえシャンデリアは2m近く高さがある。鍵を取りながら着地もきっちりなんて、できるだろうか?不安がよぎる。
――ええい!いろいろ考えてもしょうがない!できなければ何度だってやればいいんだ!
彩里水は思い切って鍵めがけてジャンプする。と同時に放物線上にシャンデリアの横に着地できるように。
タンッ!
彩里水が心配したよりより簡単にうまくいった。
「よし!」
――・・・できた。できた!そんなに怖がることなかった!オレ、全然できるじゃん!
ドアを開けても通れるわけではないが、とにかくここを開けて外を見たい。誰かいるかもしれないし、叫べば聞こえるかもしれない。急いでドアノブに駆け寄ると鍵を差し込む。
するとドアは開きながら彩里水が通れるサイズに大きくなる。
「うわあ!」
大きくなりながら開く扉に驚いて一瞬怯んだものの、白ウサギを追いかけるという目的を思い出し、急いで外へ飛び出す。
扉の向こうに出ることができた彩里水は、前方にまた白ウサギを見つける。心なしか、白ウサギは着ぐるみではなく本当にウサギが二足歩行しているように見える。
また懐中時計を見ながら一目散に奥の森の方に向かって走っている。
「あ!ちょっと待って!待ってって!白ウサギー!」
彩里水はかなり前方にいる白ウサギに、今度こそ置いて行かれまいと必至に追いかける。
「ちょっと!白ウサギー!待てー!」
白ウサギとの距離はだんだんと縮まっていたが、白ウサギは前方にある森の中にスッと消える。そのすぐ後に白ウサギが入ったはずの森の中に彩里水は足を踏み入れる。
と、そこにいたのは白ウサギではなく白いTシャツに白い短パンの、彩里水と同じ年ぐらいの少年だった。
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