少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口7-
7 白兎との出会い
「あれ?くっそー、またいない。」
白ウサギをまたしても逃がしてしまった彩里水は気配が無いかキョロキョロ辺りを見回し全速力で走ってきてハアハアと肩を揺らしながら少年に尋ねる。
「あの、ここに白ウサギが通らなかった?」
少年は怪訝な顔で答える。
「・・・は?てか、おまえさっきから何で人のこと追いかけてくんの?それにオレの名前は白ウサギじゃなくてハクトなんだけど。」
「・・・は?」
――白ウサギじゃなくてハクト、って言われても。それに追いかけてないし。
「いや、オレが追いかけてたのはアンタじゃなくて白いウサギの着ぐるみの人なんだけど。」
「は?いや、おまえずっと『白ウサギー、待てー』とか言いながらオレの後つけて来てたじゃん。」
「・・・え?」
目の前の少年が何を言ってるかさっぱりわからないが、白ウサギを追いかけてきてから今まで、わけがわからないことしか起こっていないことだけは、わかっている。だからきっと、オレが追いかけてきちゃったのはこの子なんだろう、と彩里水は無理矢理納得する。
彩里水が自分自身に言い聞かせている間にもハクトと名乗る少年は続ける。
「てかさ、おまえなんでオレの名前知ってんの?」
混乱する頭を無理矢理納得させようとせっかく考えを巡らせているのに、またしても目の前の少年は追い打ちをかけるように彩里水を混乱させることを言う。
思わず怪訝な顔をして、憮然とした態度で彩里水は答える。
「え?名前知らないけど。今自分でハクトって言ったんだろ?」
「そうだけど、漢字で白い兎って書いてハクトって読むんだよ。てか、え?知らなかったのに白ウサギーって連呼してたの?」
白兎と名乗る少年は、きょとんとした顔をしている。
「だから、言ってんじゃん。オレは白いウサギの着ぐるみを着たマスコットキャラクターを追いかけてきたって。」
「え?いや、でも、オレの前にはそんなやついなかったし、おまえずっとオレを追いかけてきてたけど。」
彩里水は再び混乱したが「はあっ」と1つ溜め息を吐くと、肩をすくめながら白兎に話しかけるというよりは自分に言い聞かせるように言った。
「よくわかんないけど、オレが追ってきたのは白兎だったのかもね。さっきから不思議なことしか起こってないし、きっとこれもそういうことなんだろ。てかさ、オレの名前は彩里水。」
「アリス?そっか。変わった名前だね。」
「うん。オレの漢字は彩りに里に水って書く。」
「へえー。カタカナかと思った。で、彩里水。おまえオレに何か用なの?」
「え?」
何か用なのと聞かれて彩里水は戸惑う。
「だってずっと追いかけてきたの、何だったの?オレじゃなかったとしても、その白ウサギのマスコットになんか用でもあったの?」
「・・・え?いやオレ、その白いウサギを追いかけて遊園地の裏にある林に入ったら、穴に落ちちゃって、そのまま落ち続けてこんな変な世界に入り込んじゃったんだ。だから、ここから出るにはその白ウサギに帰り方を聞くしかないかなと思って。」
――でも、オレが追いかけてきた白ウサギのはずなのに、白兎だったし、どうすればいいんだろう?帰り方とか知ってるかな?
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