少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口17-
17 キングとジョーカー
その人物はこれ以上ないような卑屈な笑顔を顔に貼り付けヘラヘラと双子におべっかを使いながらご機嫌を伺っている。
その態度からは到底そうは思えないが、服装だけは王様のようだ。大変高価そうな鮮やかな深紅のローブを身に纏い、その頭上には王冠が輝いていた。そして双子はその王様のような人物に「キング」と言っている。
「・・・また変なの出て来ちゃったな、彩里水。」
「・・・うん。登場の仕方としては白兎が1番変だったけどね。」
「おいっ。」
彩里水と白兎がキングを見ていると、双子はキングに命令する。
「キング、この2人を“許しの塔”に幽閉してくれる?」
「君をその責任者に任命するよ。」
双子が薄ら笑いながらキングと呼ばれた者に言うと、今度はこれ以上ないというような恍惚の表情でキングは返事をする。
「は、はい!直ちに!」
幽閉と聞き白兎は慌てる。
「おい!何だよ、幽閉って!次から次へとおまえら!シリアス展開はごめんだからなっ!」
白兎が双子に向かって怒鳴るとキングは白兎に対しては汚い物でも見るかのような顔をして言う。
「こら貴様!何という口を聞く!このお二方が誰かわかっていないかのような口ぶりだな!」
「誰かわかってないって、誰なの?この2人は?」
彩里水はまた興味のままに質問をすると、双子が会話に割って入る。
「・・・キング。君はこの2人に余計なことを言う必要はない。」
「そうだね。ただ、黙って許しの間に連れて行き、その後彼らをそこから決して出さないことだけが君の使命だよ。」
「ふふ。キングがおかしなことをしたり失敗したらどうなるか・・・。楽しみだね?逸。」
「そうだね。そんなことが起きないといいよね。禅。」
2人は冷たい目でキングを一瞥する。
するとそこに、また違う者が現れ、双子に声をかける。
「やあ、ここにいるなんて珍しいね。」
その者は、先が二股に分かれたパジャマ帽のようなかぶり物を被っていた。ただ、それが普通の帽子と違うのは、頭だけではなく、マスクのように顔半分をそのまま覆っていることだ。三日月を逆さにしたような目出しの穴が開けられており、顔の左側は黒く右側は赤い。露出している顔の下半分は形の整った美しい鼻とまるで強制的に笑みを浮かべざるを得ないように耳から耳へと弧を描き裂けているような大きな口がのぞいていた。
襟元にはピエロがつけているような黒い襞襟が付き、上半身はポンチョのような形状だがウエスト辺りがキュッと締まり、その形状のせいか異様なほど腰が細く締まって見える。体の右半身は人型のようだが、左半身からのぞく人ならば手や腕があるはずの部分は真っ直ぐな金属で、足の部分も金属で平仮名の“し”を左右反転させた形をしている。手を左半身はまるでJという形になっているようだ。襟の部分以外は一枚の布で下半身はタイツ上になっており、全体は赤と黒のストライプだ。
この異様な姿は、服装や見た目だけではなく、このものが醸し出す雰囲気を持ってして完成しているようだと、彩里水は人目見て感じた。
何というか、全てが禍々しくその存在を前進で主張しているようでもあり、全てが薄っぺらく偽りのようでそこにいないかのように空っぽでもある。
つづく
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