少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口25-

25 キップとクップ



「あ、あのさ、ところで!」


そこまで大声で言った彩里水はハッと気がついたような素振りで口を覆い、声のトーンを落として続ける。


「ところでさ、あの外の縄、あるでしょ?あれは人型の縄じゃないの?」


「フム。」と少し離れた縄を、目を細めて見たラープンは彩里水似合わせて小声でソッと口を開く。


「・・・アレは純物型のようですよ。珍しいですねえ。なぜアレがこんなところに?」


独り言のように続けるラープンに聞かれないように、彩里水はコソコソと何やら考えている様子の白兎をグイと引き寄せ話しかける。


「ねえ、白兎!」


「わわ!何だよ。」


急にグイッと引き寄せられた白兎はよろめきながら答える。彩里水はコソコソと話を続ける。


「あのさ、あのトランプの見張りたちを何とかする方法、このヒトたちに協力してもらえないかな?」


「え?あ、ああ。うーん、どうなんだろ?迂闊に言ってもなあ。この城の人たちなんだろうし、もし逃げだそうとしてるのバレたらまずくない?」


「え?逃げだそうとしてるんですか!?」


いつの間にかコソコソと話す彩里水と白兎の間にいたカップたちが、愛らしい声でコソコソと会話に参加してくる。


「わ!」


驚いた2人は同時に低く声を上げ、聞かれてしまって気まずそうに顔を見合わせる。


「あ、大丈夫ですよ、僕たちは。ラープンさんに見つかると良くないかもしれないけど・・・。」


「そうそう、僕たちここにずーっといて、すごーく暇なんです。」


2つのカップは彩里水と白兎を真似てコソコソと話し出す。


「そうなんです。だから、ここから逃げ出すんであれば、僕たちも協力するのでその代わり僕たちを連れて行ってくれませんか?」



――暇だからついてくって、自由なコップだな。・・・なんか、彩里水っぽいな。



チラリと彩里水を盗み見ながら白兎は思った。


カップたちはお願いするように上目使いで彩里水と白兎を交互に見る。


彩里水はカップたちに顔を近づけるとさらに声のトーンを落として言った。


「え?協力してくれるの?君たちを連れて行くのは別にいいけど、君たちが怒られちゃうんじゃないの?」


「僕たちはいいんですー。もううーんざり、なんですー。」


「ホントに?じゃあ、協力してくれる?」


そう彩里水が言うと、キップとカップはピョンピョン跳びはねて喜んでいる。


「お、おい。勝手にそんな約束して大丈夫かよ?」



――ただでさえ、彩里水が天然ガチなのに、これ以上天然ばかり増えてもちょっとばかり可愛いだけの庶民的感覚のオレには荷が重いぞっ!



白兎が心の声はソッとしまって小声で彩里水に確認する。


「だって、あのトランプの見張りさえどうにかすれば縄をゲットしてするするっと逃げられるかもしれないんだし、こんなところにずっと閉じ込められるの絶対いやだよ。それに、早くしないと、ただここで閉じ込められるだけで済むのかどうかも何もわからないわけだし。少しでも協力者が多い方が心強いよ。」



――ほら、するするっと逃げられるとか言ってるぞ。この高さから命綱もなしにロープで下まで下りるのがするする!?どうかしてなきゃ出てこない発想だぞっ!



白兎はそう思いながらも協力者が多い方がいいというのには賛成だった。


「そ、そうだな・・・。」


白兎が納得するとすかさず片方のカップが質問する。


「それで、僕たちはどうすればいいんです?」


「あ、その前に。おまえたち、キップとクップってどっちがどっち?」


「あ、えーとぉ、青い線が入っているのがキップで赤い線が入っているのがクップですー。」


マグカップ型のカップの飲み口から1cm程の場所に2mm程度の線が1本引いてあり、彩里水が使っていた方は青い線、白兎が使っていた方は赤い線があった。


「オッケー!青がキップで赤がクップね。オレも名前に青がつくんだ。一緒だね、キップ。」


彩里水がそう言うと、キップはとても嬉しそうに笑顔を浮かべ、


「はい!」


と答えた。


つづく

妄想列島

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