少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口61-
61 蟻の行列
彩里水に呼ばれた白兎は、いつの間にか数メートル離れた場所でしゃがんで何か見ている彩里水のところへ行く。
「見て!蟻!蟻の行列!」
彩里水は嬉しそうに蟻の行列を眺めている。
「・・・おまえなー。・・・昆虫好きなのか?だけど今は蟻の行列見て喜んでる場合じゃないだろ?」
白兎は彩里水のマイペースさに若干呆れながら言う。
「いやいや、じゃなくてさ、この蟻たちだって、この世界にいるってことは純型の蟻っていうか、オレたちの世界にいる蟻とは違うわけだろ?」
「・・・あー。あそっか。でもそれがどうしたんだよ?」
「で、ちょっと話しかけてみたわけ。」
「・・・ほう。」
――ほんと、なんなんだよこいつの適応能力の高さは。蟻に普通に話しかけるってできる?オレが庶民的感覚を持ちすぎてるの?
「そしたらさ。」
「うん。」
「蟻さんたちは盗賊で、こっから外まで続く穴を塀に開けて、ここと外を行き来してるってわけらしいんだよ。」
「ほうほう。・・・っていや、盗賊って何なんだよ!それすらももう受け入れてんのかよ!」
「なんだよ、白兎。ほんとおまえはいつも変だよな。」
「・・・。いーよわかったよ。オレが変なんだよ。・・・で?」
「だから、オレたちもその穴を通っていいかって聞いたらいいって言うんだよ。よかったないい蟻さんたちで。」
彩里水は満面の笑みを浮かべている。
白兎はまた無表情になって彩里水を見た。
「おまえはいつもそうやって・・・。」
「え?」
「だから!そりゃ通れりゃいいけど、穴だって蟻のサイズだろ?オレたちがどうやって通るんだよ!」
白兎は彩里水を食べそうな勢いで突っ込みを入れる。
彩里水はすごい剣幕の白兎にタジタジと答えた。
「えーっと、だからその方法を探してみようよ。」
「いや、1番どうやるかわかんないだろ!」
「白兎、顔!顔が怖すぎるから!」
「おまえがいつもいつも突拍子もなくわけわかんないことばっか言うからだろー!そりゃあおまえの考えは悪くはないけど・・・」
彩里水を頭から食べそうな勢いで彩里水に文句を言う白兎を手で制しながら彩里水は続ける。
「でもさ、オレここに来たとき、メチャクチャ小さい扉があってそこを通んなきゃどこにも進めなかったんだ。で、どうしようかととりあえず鍵を開けてみたら、その扉、オレのサイズまで大きくなったんだ。」
「・・・え?」
彩里水を食いそうな勢いで文句を言っていた白兎は動きを止める。
「そ、それにホラ、食べ物。梨とかリンゴとか身体が伸びたじゃん?アレも割と使えるかもだし、今更ながら従業員棟に戻ったら何か食べ物あるかも。それ食べたら身体が縮んだりとかあるかもよ?」
「・・・ふむ。おまえにしちゃ、割とちゃんとした意見。」
「だろ?」
白兎が彩里水を食いそうな勢いではなくなり、彩里水はホッとしながら言う。
「ちょっとさ、キップたちにも相談してみよ。」
「おう!だな!」
そう返事をすると白兎はポケットの中のキャンドーに説明する。
彩里水もキップとクップをポケットから出そうとしたが、その瞬間目に入った蟻の行列に目を奪われる。もう一度蟻の行列をじっくりと眺める。
――蟻ってすごいよなあ。蟻だったらものの大きさとか関係なくどこにでも行くんだよなあ。この行列に混ざってオレたちもここを歩いて、あの塀のところに空いている穴に入って行って・・・。
そう考えているうちに彩里水は蟻の行列にいつの間にかどんどん顔が近づいていた。
――え!?
彩里水は慌てて身を起こす。
――アレ!?え!?
「うわ!」
つづく
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