少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口19-

19 許しの塔


キングがトランプ型の衛兵を大声で呼びつけると、呼びつけられた衛兵にグイグイと引きずられ乱暴に縄を外された彩里水と白兎は、城の端の方にある塔の最上階に押し込められた。

ガシャンッと乱暴に閉められた鉄格子の引き戸に2人は急いで駆け寄り開けようとするが固く閉ざされた扉はビクともしない。


「おい、どうする?彩里水。このままこんなところに閉じ込められっぱなしなんて絶対やだぜ!」


「オレだってやだよ。・・・ねえ白兎、あそこの窓からなら出られるっぽくない?」


そう言って彩里水は部屋についているガラスも格子も付いていない1m四方の窓に駆け寄ってみる。


「・・・そりゃそうだよねー。」


彩里水はガックリとうなだれて窓に手をかけてもたれかかる。


白兎も後ろから窓の下を覗く。


「まあ、こんだけ開け放たれてりゃそうだよな。」


窓の下は引っかかりなども何もなく、地面までは10mはありそうだった。


「ロープとかないかな?」


彩里水が言うと、白兎が間髪入れずに言う。


「あ!さっき縛られてたロープは?」


彩里水は先程まで自分たちが縛られていたロープが、鉄格子の向こうで床に投げ捨てられているままになっていることを確認する。


「手を伸ばしたら届きそうかも。」


「オレたちがグルグルに巻き付けられていたし、風船みたいに繋がれていたことを考えると、2人のロープをあわせれば10m近くになりそうだよな。」


2人は顔を見合わせて笑うと、鉄格子のそばでロープに向かって手を伸ばす。


「ぐぬー。・・・以外と届かないー。ってか結構遠くない?」


息を止めて可能な限り手を伸ばした彩里水はゼイゼイ言いながら白兎に言う。


「ぐううー。・・・と、届かねー。」


彩里水より背が高い白兎だが、やはり縄には届かない。


「んー。なんか棒とかないかな?」


彩里水は幽閉された小部屋を見回す。


円形状の部屋の中には先程の窓を中心にして対称の位置にベッドが2台とクローゼット、そして食器が少しだけ置かれた棚と小さな流し台があるだけだ。


彩里水はまずクローゼットの中を確認した。


すると、そこにはハンガーが数本掛けられていた。


「あ!あった!ハンガーがある!これなら引っかけて余裕で取れそう!」


食器棚を確認する白兎を振り返り、彩里水はハンガーを掲げてみせる。


食器棚の中を確認していた白兎は彩里水の声に振り返り笑顔で答える。


「おお!いいじゃん!よし!とろうぜ!」


そう白兎が言ったところにガシャンと鉄格子が開かれる音がして、トランプのジャックと3の衛兵が入ってくる。


「貴様!そのハンガーで何を取るつもりだ!」


トランプのJが怒鳴り散らす。


彩里水はサッとハンガーを後ろ手に隠したが、そのハンガーを持った手ごと手首を掴まれ前に出される。


「貴様!何か企んでいるな!」


「た、たくらんでなんか・・・!」


彩里水がなんとかごまかせないかと思ったのも虚しく、Jの衛兵はあっという間にハンガーを回収し、


「貴様たち!何か企んでいたらただでは済まんぞ!これより貴様たちの見張りをつける!おかしな行動は全て報告されると思え!」


と言い放って去って行った。


トランプのハートとスペードの3は片方が飲み物を、片方が食べ物を持ってやってきていた。


お盆に乗せられた少しのパンと果物が、2人がこの世界に来て初めての食事だった。


それを部屋の内部に乱雑に置くと、再びガシャンと鉄格子の出入り口に鍵をかけ、ハートの3の衛兵は鉄格子のすぐ横で彩里水たちに背を向けてたち、スペードの3は前面廊下の反対側から彩里水たちの方を向きピクリとも動かず立っていた。


つづく

妄想列島

オリジナル小説。 『少年彩里水(アリス)の不思議冒険譚』毎日配信中。

0コメント

  • 1000 / 1000